2008年08月07日

切腹

切腹とはどういう映画か?
当然、切腹をする人がいる映画なのだが、私が持っているイメージの切腹とは一味違う展開を見せる映画だ。

当時の江戸で、生活に困った浪人が立派な屋敷を訪れて「切腹のためにお庭拝借・・・」 といって、金品を得て持ち帰るという流行があった。
そんな中、ある屋敷に一人の浪人が「切腹のためにお庭拝借・・・」 といって訪れてきた。

屋敷の人もサッと金品を渡して追い払えばそれで終わりなのだが、「以前、同じことを申し出る者がいて切腹のために庭を貸した。そなたにも・・・」 という展開になる。

いったいどうなるんだ? と思っていると、次第に思わぬ背景が浮かび上がり、浪人の真意が明らかになっていく。
モノクロ映画が、作品の雰囲気とマッチしジワジワと心情に迫ってくる映画だった。

切腹の脚本は、黒澤組の橋本忍が手がける。
元々は黒澤明が監督をするという話もあったようだが、小林正樹がメガホンを取ることになった。
構成に力があり、計算しつくされたカット割や役者の力強さを引き出すところなど、個人的には黒澤作品と似ているところがあると思った。

切腹のあらすじ
井伊家上屋敷に津雲半四郎と名乗る浪人が訪れる。
「切腹のために庭先を貸して欲しい」 とのこと。
家主は半四郎を通し、話を始める。

1週間ほど前にも求女という浪人が尋ねてきて、同じ事を言ってきた。
求女は、金品をもらい追い返されると思っている。たかるつもりだったので本気で切腹する気はない。武士の魂である剣もすでに質屋に入れてしまった。
そんなことはお構い無しに井伊家のものは、「庭先を貸してやるから切腹いたせ」 という。

求女は、「一日待ってくれ」 と頼むが、「切腹させてくれといっておいて、待ってくれとはおかしな話」 と一蹴する。
追い込まれた求女は、竹光(刀に見せかけるための竹を削ったもの)で切腹をする。しかし、竹で腹が切れるはずもなく、周りからは馬鹿にされ、痛みと屈辱から舌を噛み切って死んだ。

家主は半四郎に、出身を聞く。すると求女と同じ藩の者だと分かる。しかし、大きな藩なので、同じ藩だが知らない。そういい「私は、たかるつもりはない。切腹の準備をしてくれ」 と頼む。

切腹の準備が整い、半四郎は介錯人を3人指名する。しかし、その日に限って3人はまだ来ていなかった。
半四郎は介錯人の到着を待つため、切腹の前に身の上話を始めた。
半四郎は藩に奉公し、親友と武勇を重ね、お互いに子供がいた。
だが、幕府からの命により藩を取り潰す事になってしまう。親友は息子の事を半四郎に子供を頼み、責任を取って切腹する。

どうやら介錯人は3人とも病気で休んでいる。
家主は介錯人は他に立てるからさっさと切腹せよとまくし立てる。
半四郎は、別の人では出来ぬといい、一悶着起こるが身の上話を続ける。

世の中には浪人が溢れ、切腹に庭先を貸してくれといってたかる人も出るような時代。
優秀な武士とはいえ新たな奉公先を探す事は難しい。

半四郎は娘と二人部屋を借り、傘作りの内職でなんとか食べていた。
そんな中、娘が出かけると同時に大家が金の取立てに来る。半四郎には払う金はない。
そこで大家は「娘も年頃のべっぴんだ。良家との縁談がある」 と話を持ち出す。
話を受ければ、娘もよい暮らしが出来、半四郎もまた奉公先を得られるようになる。それでも断る半四郎。

半四郎は親友の息子である求女のところを訪ね、娘と結婚してくれと頼む。
求女は、金もないし断るといったが、半四郎は引き下がらずお互いに惹かれあっているのだからと認めさせる。
二人は結婚し、子供が生まれる。家族団らんし合わせのときが続いた。

だが、長くは続かず、無理をして働いていた娘が血を吐き倒れる。病気の治療もまともに出来ず収入も減る。さらに子供が熱を出す。
途方にくれていたが、求女が「金のあてがある。夕方までには戻ってくる」 と言って出かける。

夕方、求女は戻ってこなかった。
あくる日、3人の武士に運ばれ求女の骸が帰ってきた。
3人は、求女を散々馬鹿にして帰っていった。
娘は途方に暮れ、子供は熱の治療が出来ず死んでしまう。娘も次の日後を追うように息を引き取っていた。

半四郎はそういって話を終える。
そして懐からちょんまげを放り投げる。例の病気で休んでいる3んにんのちょんまげだ。
半四郎は、どのようにちょんまげを奪ったかを詳細に語り、「求女に対する井伊家の対応は間違っていたのではないか? これだけの人がいておかしいと思うものはいなかったのか?」
冥土の土産に謝罪の言葉でも持っていこうかと思っていたが、家主は反論する。

半四郎は一人井伊家の武士たちを相手に戦う。何人も命を奪うが、自分も傷を負う。
半四郎は右往左往しながらある部屋へ辿り着く。井伊家の家宝であるよろいのある部屋。先祖代々受け継がれた来たものだろうが、半四郎は鎧をぶち壊す。
井伊家のものは鉄砲を持ち出し、半四郎は追い詰められる。そして自ら切腹する。鉄砲は容赦なく半四郎に打ち込まれる。

その日の井伊家の日誌には、庭先を借りに来た浪人は無事切腹。切られた者はすべて病死。ちょんまげを切られたものもすでに一人は切腹していたが残す二人も追って切腹させた。そして3人とも病死。
すべて闇に葬られた。

posted by mol at 02:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 傑出映画
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